2018年7月29日~8月2日: AAPM 2018
2018年7月28日~8月2日にアメリカのナッシュビルで開催された第60回米国医学物理学会(AAPM)に医学物理グループから、助教の角谷先生、博士1年の戸森さん、修士2年の梶川の合計3名で参加致しました。
■日時: 2018年7月29日~8月2日
■場所: Music City Center (downtown), Nashville, TN, USA
■学会: AAPM 60th Annual Meeting

東北大学大学院医学系研究科 放射線腫瘍学分野 医学物理士養成コース
修士課程2年 梶川智博
2018年7月28日~8月2日にアメリカのナッシュビルで開催された第60回米国医学物理学会(AAPM)に医学物理グループから、助教の角谷先生、博士1年の戸森さん、修士2年の梶川の合計3名で参加致しましたので、報告致します。
ナッシュビルは「カントリー・ミュージックの本拠地」として有名な街で、音楽業界の中心地として知られています。ダウンタウンではライブハウスが多く、街の至る所で音楽が流れており、その賑やかさに圧倒されました。
私は、“A deep convolutional neural network approach for IMRT dose distribution prediction in prostate cancer patients”という内容で、Campus ePoster発表を行いました。AAPMのCampus ePosterは1人1時間の持ち時間が与えられ、座長を交えたポスター発表および自分のポスターを見た方との質疑応答をするという形式のものでした。
近年、放射線治療は強度変調放射線治療 (IMRT)や強度変調回転放射線治療 (VMAT)などの治療法により大きな発展を遂げました。これらの治療法は線量を腫瘍部に集中させ、その周囲の正常組織への障害を減らすことができるため、治療成績の向上に好結果をもたらしました。その一方で、治療計画の複雑さの増加により、計画時間の増加および計画の質のばらつきが問題となっています。これらの問題を解決するため、線量分布の予測は、計画時間を削減し計画の質を維持および向上することを目指したホットな研究分野となっています。以前のアルゴリズムは、臓器の位置関係などに由来するhandcrafted featuresに依存しているため、患者情報を十分に活用することはできていないことが考えられます。私は、このhandcrafted featuresへの依存を低減するため、ここ数年で医療分野を含む様々な分野で利用され始め、多くの成功を収めた畳み込みニューラルネットワークに注目しました。この技術は、画像データから高水準な特徴量を自動的に抽出し、より高次元な特徴を利用することができます。しかし、この研究分野において、畳み込みニューラルネットワークを応用させた報告はほとんどありません。そこで、私は、この畳み込みニューラルネットワークを応用し、IMRTで治療した前立腺癌患者の線量分布を予測するためのアルゴリズムを提案し、その報告を行いました。発表時には、主に深層学習の研究を行っている研究者らが来て下さり、その方々と有益なDiscussionができ、その内容を今後の研究に反映したいと思います。ただ、質疑応答は全て英語で行う必要があり、自身の英語のスキル不足により、自分の考えをうまく伝えることができなかった場面が多く、非常に悔しく思います。自分の研究内容および考えをより多くの方々に発信するため、さらなる英語のスキルアップが必要であると強く感じました。今後の国際学会では、今回の反省点を活かしたいと思います。
今回のAAPMでは、放射線医療に人工知能を応用させた研究が多く見受けられました。これは、医療分野に限らず多くの分野で人工知能が好成績を残していることによるものかと思います。使用用途としては、放射線治療の質の向上をはじめとして、画質ならびに画像診断の質の向上によるものがありました。その他の用途もあり、人工知能は非常に高い汎用性を持つものであると再認識しました。日本では、人工知能を用いた研究はまだ少なく、基礎研究が多い状況ですので、今後も私たちが継続的な研究および発表を行い、国内の放射線治療をさらに活気づけることができるように精進したいと思います。
また、自身の別の研究テーマである、CT VentilationのWorkshopにも参加しました。その界隈で有名な研究者らが多く出席しており、CT Ventilation画像の作成法の研究をはじめとした最先端の多様な研究を聞くことができました。国内ではあまり盛んに行われていない研究テーマですので、CT Ventilationの動向を知ることができ、非常に勉強になりました。ここで学んだことを自身の研究にフィードバックできればと考えています。
最後に、発表を行うにあたりご指導していだいた先生方、ならびに、このような機会を与えて下さいました放射線科医局の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

左:東北大学メンバーの集合写真 右:発表の様子

左:懇親会の様子 右:ダウンタウンの風景