当院の放射線治療部門の設備について、外照射用放射線治療装置は、Varian社製のLinacが2台(TrueBeam 1台、TrueBeamSTx 1台)とElekta社製のLinacが2台(VersaHD 1台、Unity 1台)、密封小線源用放射線治療装置は、Elekta社製のmicroselectronHDR(Toshiba社製の同室CT装置も配置)があります。また、治療計画装置は、Eclipse (Varian) 10台、Monaco(Elekta) 4台、VariSeed(Varian) 1台、Oncentara(Elekta)1台、治療計画支援ソフトウェア Velocity grid (4ライセンス)があり、研究用としてEclipse(Varian)5台、RayStation (RaySearch Laboratories)2台があります。また、放射線治療品質管理用ツールとして、MapCHECKやArcCHECKなどの二次元・三次元検出器をはじめ、多くのツールを使える環境下にあります。これらの恵まれた環境下で、AAPM(米国医学物理学会)でも医学物理士の業務として定義されている、“臨床・研究・教育”の3つの業務を行っています。各業務の詳しい内容は以下に示します。

臨床業務

治療分野における医学物理業務として以下があげられます。医師や診療放射線技師、放射線治療品質管理士の業務との重複もありますが、医学物理学の観点から関与するという点において異なります。

(1) 治療計画における照射線量分布の最適化および評価
(2) 治療装置・関連機器の受け入れ試験(アクセプタンステスト)・コミッショニングの計画、実施、評価
(3) 治療装置・関連機器の品質管理・保証の計画、実施、評価
(4) 治療精度の検証、評価
 (一部、日本医学物理学会資料より引用)

(1)については、当院ではすべての治療計画を医学物理士が確認を行い、その治療計画が妥当であるかを評価しています。また、体幹部定位放射線治療(SBRT)や強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度放射線治療では、医学物理士が治療計画の立案を行い、その計画をもとに医師と相談し最終的な治療計画を決定しています。また、RALSを用いた婦人科領域の密封小線源治療においては、医学物理士が、危険臓器のコンツールや治療計画の立案を行っております。(3)については、月ごと、年ごとのLinacの品質管理を医学物理士が放射線技師と協力して測定および解析を行っています(当院では、年ごとのQAに関しては月1回のQA日を設定しています)

研究業務

 医学物理士の業務の一つである放射線治療の発展に貢献する研究開発として、医学物理グループでは、非剛体レジストレーション、CTベース肺機能画像、MRI-Linac、AIベース治療効果・副作用予測、 AIベース自動計画、AIベース患者QAの研究を主に行っております。Deformable image registrationの研究成果は、特許出願および製品化を実現し、また、4D-CTに関連する研究成果も既に臨床にも利用されています。当研究室は、大きな研究成果を達成するために教員や大学院生の個々の研究が一本の線のように上手く繋がり、最終的に大きな研究成果が達成出来るよう全員が研究を行っており、大学院生の研究テーマもそれに則して決定しています。医学物理士としては、その研究成果を臨床にフィードバックさせ、最終的には患者の治療成績向上および副作用低減に繋げることが重要だと考え、そのことを医学物理部門の最大の目標としています。詳しくは、研究紹介および研究業績をご覧ください。

教育

2007年から文部科学省がんプロフェッショナル養成プランが始まり、本邦においても多くの医学物理教育コースが誕生しました。それを受けて、2009年3月に医学物理士認定機構(JBMP)が設置され、2012年より大学院医学物理教育コース認定が開始されました。2023年4月現在では26大学が認定されています。我々の医学物理士養成コースは2012年4月にJBMPから認定されました。修士・博士課程ともに、講義による座学による教育に加え、大学病院および関連施設での医学物理士トレーニング・医学物理研修もカリキュラムに含まれており、大学院修了後には医学物理士として臨床で活躍できる基盤を構築できるようなコースとなっています。講義については、理工系学部出身の学生は、大学院において医学系の知識を習得できるように、医療技術系学部出身の学生は、理工系の知識を習得できるようにカリキュラムを作成していますので、どちらの学部出身者でも理工系と医学系の知識を習得することができます。

©Division of Medical Physics, Department of Radiation Oncology, Tohoku University Graduate School of Medicine