2015年10月24日:東北大学医学物理セミナー
平成27年度東北大学医学物理セミナーを開催致しました。140名近い方に参加して頂きました。
■日時: 2015年10月24日
■場所: 東北大学川内キャンパスマルチメディア教育研究棟2階マルチメディアホール(M206)
■学会: 東北大学医学物理セミナー

東北大学大学院放射線腫瘍学分野
助教 角谷倫之
毎年東北大学主催で開催しています東北大学医学物理セミナーを10月24日(土)に開催致しました。今年は“肺がんの放射線治療における高精度化”をテーマとして、肺がんにおける臨床的側面、治療計画について、また今後導入されるであろう最先端の研究について7名の先生に講演して頂きました。140名ほどの参加があり、多くの方々に参加頂きました。
ここからは私の感想を少し書かせて頂こうかと思います。
まず、東北労災病院の山本先生には肺がんの臨床面についてご講演して頂きました。我々医学物理士は治療計画を担当するので臨床面も物理面同様に理解しておく必要があります。しかし、なかなか忙しい臨床業務の中でまとまって肺がんについて学習することも難しく、今回の山本先生の講演は、肺がんの放射線治療についての治療成績や予後、臨床試験の結果などについて系統的にまとめられており、治療計画の作成にも非常に役に立つ内容で勉強になりました。
京都大学の鶴田先生には肺領域の計算精度についてお話しして頂き、現状のAAAなどの線量計算の問題点やさらに高精度な線量計算アルゴリズムであるAcurosについてご説明して頂きました。Acurosについては臨床導入までのプロセスを非常に分かりやすく、また自施設での経験を踏まえお話しして頂きました。当院でもAcurosの臨床導入へ向けて作業を進めていますので、今回の講演で得た知識を基に早期の臨床導入が出来れば良いなと思いました。
ランチョンセミナーでは当大学の本間先生にマーカーレスMLC追尾照射の開発という事で、従来の汎用Linacで追尾照射を行うMLCを用いた追尾照射についてご講演して頂きました。その中で、MLCを腫瘍に追尾させながら照射するためにはやはりある程度予測してMLCを動かさなければ的確に腫瘍に照射することが必要であり、その予測の技術開発が重要であることを学ぶことができました。本間グループのこの予測技術はちょうど米国で特許として認定され、今後VarianのLinacに搭載される日もそう遠くないのかなと思いました。
午後からは、まず南東北がん陽子線治療センターの小山先生に呼吸同期照射と息止め照射についてお話しして頂き、X線だけではなく陽子線についてもお話しして頂きました。実際に臨床ではどちらの方法も使用されているので、この二つの方法のメリットとデメリットを十分把握して臨床でどちらの照射を使用するかを決定する必要があると改めて感じました。
がん・感染症センター都立駒込病院の木藤先生には、動体追尾照射についてお話しして頂き、Veroを用いた駒込での経験や現在の研究内容についてお話しして頂き、実際にVeroやサイバーナイフで追尾照射を実施している施設の方や今後導入を検討している施設の方には非常に参考になったのではないかなと思いました。
休憩を挟み、京都大学の宮部先生に四次元線量計算についてお話しして頂きました。この分野は、今後追尾照射などがさらに普及することでさらに注目される分野であり、その四次元線量計算についてその計算方法の概要や注意点についてわかりやすくご説明して頂きました。
最後に私が肺機能を考慮した治療計画法ということでお話ししました。肺機能を考慮した治療計画法は、SPECT画像などを用いて古くから検討されてきましたが、近年は4D-CTとdeformable image registrationの新しい技術を利用して4D-CT画像から肺機能画像を作成する研究が行われ、これを用いることで従来あまり普及していなかった肺機能を考慮した治療計画をより簡便に、より高精度に実施できると期待されております。その肺機能を考慮した治療計画法について、計画法の概要や問題点についてもご説明しました。
また、セミナー後の情報交換会も40名近い方が参加して頂き、多くの参加者が熱く医学物理・放射線治療について議論されており楽しい情報交換会となりました。
