タイ・チュラポーン王立病院「PSMD School 2026」登壇レポート:放射線治療におけるAI自動化の最前線

タイのチュラポーン王立アカデミー・スリサヴァンガヴァダナ医学部(Princess Srisavangavadhana Faculty of Medicine)が2年に一度開催する「PSMD School」に招待され、登壇してきました。
今年のテーマは「Automation in Radiation Therapy Workflow(放射線治療ワークフローにおける自動化)」。米国、中国、そして日本からこの領域の研究者が招集される中、私も日本代表として講演の機会をいただきました。
大学の講義を終えた金曜日の朝に仙台を出発し、16時にバンコクへ到着。その足で18時からの実行委員会および講師陣との交流会に参加しました。

各国の医学物理士事情と、予期せぬ「夜のミッション」

交流会では、講師のDr. Jin Xiance(中国・温州医科大学附属第一医院)、Dr. Matthew Schmidt(米国・ワシントン大学)、そして実行委員であるチュラポーン王立病院の医学物理士や学生の皆さんと、各国の業務内容、現場の課題、教育について深く情報交換をすることができました。

参考リンク:
Dr. Jin Xiance 紹介ページ
Dr. Matthew Schmidt 紹介ページ

お話を伺う中で、国ごとの体制の違いが浮き彫りになりました。 チュラポーン王立病院には医学物理士が8名在籍し、リニアックは3台(すべてVarian製のTrueBeamなど)。米国とは異なり、放射線治療計画も医学物理士が担当しています。 一方、米国にはドシメトリスト(線量計量士)がいるため、医学物理士自身は治療計画(線量分布作成)を行いません。今回ご一緒したシュミット先生もチーフQA担当であり、研究としてはRapidPlanやスクリプトを使ったAPI開発に取り組まれているとのことでした。
そして、ここで予期せぬ事態が判明します。 翌日のスケジュールについて、私は「AI自動計画とAI患者QAの開発について1時間」お話しする予定で準備をしていました。しかし、どうやら「発表を2つ(合計2時間枠)」お願いしたかったとのこと! さらに、発表後に「AI自動計画について1時間のフリーディスカッション」があることも発覚。交流会を終えてホテルに戻ってから、夜な夜なスライドを一気に増やし、ディスカッションに向けた準備もバタバタと進め、なんとか翌日に間に合わせました。

▲ 左:角谷、中央:Dr. Jin、右:Dr. Schmidt

▲ チュラポーン病院の医学物理士や学生さんたちとの和やかな食事会

タイの医学物理を牽引する「4大拠点」

また、今回の訪問と現地の先生方との交流を通じて、タイ国内の医学物理・放射線治療研究を牽引している「4つの大きな拠点」についても深く知ることができました。

  1. マヒドン大学:私の研究室にも留学生や卒業生が在籍しており、以前から非常に縁の深い大学です。
  2. チュラロンコン大学:タイ随一の歴史と権威を誇る、王室・王子系トップクラスの大学・病院。
  3. チェンマイ大学:タイ北部の医療と研究を力強く支える絶対的な中心拠点。
  4. チュラポーン王立アカデミー(チュラポーン病院):そして今回私を招待してくださった、タイ国内の放射線治療を積極的にリードする最先端の拠点です。

これらの機関が切磋琢磨し、タイ全体の放射線治療のレベルを急速に押し上げている現状を肌で感じることができ、大変刺激を受けました。

発表と熱気あふれるパネルディスカッション

翌朝は8時半にホテルのロビーで集合し、9時から発表がスタート。シュミット先生が私にまでアメリカサイズの特大アイスコーヒーを買ってきてくれ、2人で様々な話をしながら会場へ向かいました。
会場には、タイ国内はもちろん、フィリピンや韓国などアジア各国から約50名が現地参加していました。 私が1時間の発表を終えた後、質疑応答の時間が設けられましたが、現地とオンラインを合わせて10個以上の質問が飛び交う盛況ぶりでした。質問に回答していく中で、私自身の研究のアイデアや知識も深まり、大変勉強になりました。
続いて行われたパネルディスカッションでは、以下のようなテーマについて、会場や講師の先生方と白熱した議論を交わしました。

議論を通じて、参加者の皆さんが日本と同等、あるいはそれ以上に「放射線治療のAI化」について深く考察していることがわかりました。AIに対する強い期待がある一方で、現場へどうやってスムーズに導入していくかという不安も抱えており、「世界中、皆同じ課題意識を持っている」ということを再確認できた貴重な機会でした。

おわりに

今回の訪問では、タイの強力なアカデミア・ネットワークを知るとともに、タイやフィリピンの大学から学生交流や共同研究の依頼もいただき、非常に実り多い出張となりました。引き続き、国際的な交流を深めながら、放射線治療の発展に全力で取り組んでいきたいと思います!

▲ おまけ:タイのアイスは、ピュアで濃厚でとても美味しかったです!

©Division of Medical Physics, Department of Radiation Oncology, Tohoku University Graduate School of Medicine